ChatGPTの「嘘ばかり」にイライラする前に。AIの“知ったかぶり”を調教する、たった3つの方法

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自信満々に答えたかと思えば、間違いを指摘すると「ご指摘の通りです」と、悪びれる様子もなくコロッと手のひらを返すChatGPT。

その姿に「嘘つき!」「いい加減だ!」と、裏切られたような、あるいは、からかわれているような気持ちになったことはありませんか?

その感覚、決してあなたがおかしいわけではありません。Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトでも、「ChatGPTが嘘ばかりで困っています」という悲鳴にも似た相談が、後を絶たないのですから。

この記事は、そんなAIの“知ったかぶり”の正体を解き明かし、あなたのイライラを「なるほど!」という納得感に変えるための、少し変わったAIの取扱説明書です。この記事を読み終える頃には、あなたはもうAIの嘘に振り回されることなく、未熟なAIを賢く育てる「トレーナー」になっているはずです。

ChatGPTの正体は「口がうますぎる、知ったかぶりの新人社員」である

なぜChatGPTは、あんなにも平気で嘘をつくのでしょうか?
その現象は、専門的には「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれていますが、もっと分かりやすく、AIを「配属されたばかりの、超優秀だけど、知ったかぶりな新人社員」に例えて、その心の仕組みを覗いてみましょう。

なぜ「嘘」をつくのか?:上司(あなた)を失望させたくないから

新人社員(AI)は、膨大な知識(学習データ)を持っていますが、実務経験(最新の情報や、特定の文脈の理解)はまだありません。そんな時、あなたが彼に「〇〇について教えて」と質問すると、彼はあなたを失望させたくない一心で、知らないことでも「わかりません」とは言えません。

その代わりに、自分が持っている知識の断片を、最も「それらしい」形で繋ぎ合わせ、自信満々に答えてしまうのです。これが、ChatGPTがもっともらしい嘘をつくメカニズムです。悪意があるわけではなく、ただ、あなたに応えたいというプログラムが暴走している状態なのです。

なぜ「悪びれない」のか?:プライドや感情がないから

あなたがその間違いを指摘すると、新人(AI)は「大変失礼いたしました。ご指摘の通りです」と即座に訂正します。ここに、人間のような「恥」や「気まずさ」といった感情は一切ありません。彼は、あなたの指摘を「新しい、より正確な情報」として淡々と受け入れ、ただ計算結果を修正しただけなのです。

なぜ「同じ間違い」を繰り返すのか?:会社の研修にはすぐ反映されないから

さらに厄介なことに、あなたがせっかく間違いを教えてあげても、翌日同じ質問をすると、彼はまた同じ間違いを繰り返します。

これは、あなたの指摘が「彼個人の、その場限りのメモ(コンテキスト学習)」には記録されても、会社全体で行う「公式な研修マニュアル(AIモデル本体)」に即座に反映されるわけではないからです。AI全体が賢くなるには、もっと多くのデータと時間が必要なのです。

実はこんなにある!ChatGPTの“知ったかぶり”嘘つきパターン例

この新人AIくんは、具体的にどんな「知ったかぶり」をするのでしょうか。よくある嘘のパターンを知っておけば、騙されるリスクを減らせます。

嘘例①:存在しない人物や書籍を語る

「〇〇というテーマについて、参考になる論文を教えて」と頼むと、実在する学者や書籍の名前にもっともらしい単語を組み合わせ、架空の論文リストを生成することがあります。一見すると非常に専門的に見えますが、実際に検索すると一つもヒットしない、ということがよくあります。

嘘例②:計算や論理パズルで間違える

一見、計算は得意そうに見えますが、複雑な計算や論理のステップを途中で省略したり、勘違いしたりすることがあります。特に、文章題のような、言葉と数字が入り混じった問題では、間違いが起こりやすくなります。

嘘例③:最新の情報を知らないのに知っているフリをする

無料版のChatGPT(GPT-3.5)の知識は、過去のある時点(例:2023年初頭)で止まっています。そのため、「今年の干支は?」と聞くと、平気で去年や一昨年の干支を答えたり、「最近の〇〇ニュースについて教えて」と聞くと、古い情報に基づいて、もっともらしい嘘を生成したりします。

「嘘」を「事実」に変える!AI新人への上手な指示(プロンプト)術

では、この知ったかぶりの新人AIに、どうすれば「嘘」をつかせず、より正確な答えを出させることができるのでしょうか。感情的に怒るのではなく、彼が最も理解しやすい「指示」の出し方、つまりプロンプトのコツを3つ伝授します。

指示術1:「知らないフリ」を許す魔法の言葉

新人AIが嘘をつく最大の理由は、「わからない」と言えないからです。ならば、こちらから「わからなくてもいいんだよ」という逃げ道を用意してあげましょう。

プロンプトの最後に、この一言を付け加えるだけで、AIの回答の質は劇的に向上します。

もし情報が不確かだったり、知らない場合は、無理に答えを生成せず、正直に「わかりません」と答えてください。

指示術2:「報告書には出典を」と命じる

新人AIがどこからその情報を仕入れてきたのか、情報源を明確にさせることは、ファクトチェックの第一歩です。

必ず、参考にした情報源や、その情報が掲載されているURLを提示してください。

この指示を出すと、AIはより確かな情報源を探そうとしますし、もし架空の答えを生成していた場合は、情報源を提示できずに答えに詰まることもあります。

指示術3:一方的な断定を禁じ、思考のプロセスを報告させる

新人AIの“知ったかぶり”による断定的な回答は、非常に危険です。複数の視点を持たせ、結論に至るまでの過程を説明させることで、間違いに気づきやすくなります。

断定的な表現は避け、複数の視点や反対意見もあれば提示してください。また、その結論に至った理由や手順を、ステップバイステップで説明してください。

【お悩み相談室】ChatGPTの「嘘」に関する”よくある質問”

Q1. ChatGPTが嘘をつく理由を、専門用語で言うと何ですか?

A1. 「ハルシネーション(Hallucination / 幻覚)」と呼ばれています。 AIが、学習データに含まれていない、あるいは事実とは異なる情報を、あたかも事実であるかのように、もっともらしく生成してしまう現象のことです。

Q2. 嘘をつかせない、もっと簡単な方法はありますか?

A2. はい、あります。Web検索機能が使えるAIを使うのが最も簡単です。 Microsoft Copilot(旧Bing AI)や、ChatGPTの有料版(GPT-4以降)に搭載されているWebブラウジング機能を使えば、AIは最新の信頼できる情報に基づいて回答するため、ハルシネーションは劇的に減少します。

Q3. ChatGPTを使いすぎると、どうなりますか?

A3. AIの回答を鵜呑みにする癖がついてしまい、自分で考える力や、情報の真偽を確かめる能力(ファクトチェック能力)が低下する危険性があります。 AIはあくまで思考の「補助輪」であり、最終的にハンドルを握るのは、私たち人間自身です。

まとめ:AIの「嘘」は、あなたを成長させる最高の教師

ChatGPTの“知ったかぶり”な嘘は、一見するとAIの厄介な「欠陥」に見えます。しかし、その見方を少しだけ変えてみませんか。

AIが平気で嘘をつくという事実は、私たちに「鵜呑みにするな、自分の頭で考えろ」という、情報化社会を生き抜く上で最も重要な教訓を、身をもって教えてくれています。

「嘘つき!」とAIにイライラするのではなく、「新人くん、その報告書、出典はどこかね?」と、賢い上司のように優しく指摘して、彼を育ててあげる。AIの嘘を見抜くそのプロセスを通じて、私たち自身の情報リテラシーも、確実に向上していくのです。

AIは、私たちを映し出す鏡であり、共に成長していくパートナー。その未熟ささえも楽しみながら、この新しい同僚と付き合っていきましょう。

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