最近、Googleで何かを検索した時、これまでと少し違う表示画面に気づいた方も多いのではないでしょうか。
検索結果の一番上に、AIが自動で答えを要約してくれる「AIによる概要」という欄が、いつの間にか現れるようになりました。
一見すると、わざわざWebサイトを開かなくても答えが分かってしまう、非常に便利な機能に見えます。
…しかし、そこに書かれている内容を読んで、「ん?この情報、なんだかおかしくない?」と、小さな違和感を覚えたことはありませんか?
もしあなたが、そんなAIの答えに少しでも疑問を感じたことがあるなら、その感覚、実はものすごく大切です。そして、あなたは決して一人ではありません。
今、インターネット上では「AIの概要が嘘だらけだった」「トンデモ回答が表示されて面白い」といった声が溢れています。それは、この新しい機能がまだ完璧ではなく、多くの課題を抱えていることの証拠でもあります。
この記事は、そんなAI概要に対するあなたのモヤモヤを解消するための、信頼できる羅針盤です。
なぜAIが奇妙な間違いを犯すのか、その信憑性をどう見抜けばいいのか、そして「いらない機能だ」と切り捨てる前に知っておきたい、賢い付き合い方まで。あなたの「AI初心者の先輩」として、一つひとつ丁寧に解説していきます。
「ピザに接着剤」はなぜ起きた?AIによる概要が「嘘だらけ」と言われる3つの理由
海外で「ピザのチーズが剥がれないように、ソースに接着剤を混ぜると良い」という、とんでもないAI概要が表示され、大きな話題になりました。なぜ、AIはこんなありえない「嘘」や「誤情報」を、さも事実であるかのように語ってしまうのでしょうか。その背景には、AIの少し不器用な「思考回路」があります。
理由1:AIは「意味」を理解せず、「単語の繋がり」で文章を作っているから
これが最も根本的な理由です。私たち人間は「ピザ」「接着剤」「食べる」という言葉の意味を理解し、それらを組み合わせることが危険だと直感的に判断します。
しかし、AIは違います。AIは、インターネット上にある膨大な文章を学習し、「『ピザ』という単語の次には『チーズ』が来やすい」「『剥がれないように』という言葉の後には『接着剤』という単語が使われることがある」といった、単語と単語の確率的な繋がりを計算して、それらしい文章を生成しているに過ぎません。
つまり、AIは「意味」を理解しているのではなく、精巧な「言葉のしりとり」をしているようなもの。だから、文法的には正しくても、意味内容が破綻したトンデモ回答が生まれてしまうのです。
理由2:ネット上の「冗談」や「古い情報」まで、真面目に学習してしまうから
AIの教科書は、インターネットそのものです。そこには、信頼できる公式サイトやニュース記事だけでなく、個人のブログ、掲示板の書き込み、SNSでの冗談、そして何年も前の古い情報まで、ありとあらゆる玉石混交の情報が溢れています。
AIは、それらの情報の一つひとつが「真実か、冗談か、古いのか」を人間のように判断するのが非常に苦手です。そのため、掲示板で誰かが冗談で書いた「ピザに接着剤」という投稿を、他のレシピ記事と同じように「事実」として学習し、概要として生成してしまうことがあるのです。
理由3:複数の情報を無理やり繋ぎ合わせる「要約」が、そもそも苦手だから
「AIによる概要」は、複数のWebサイトから情報を抜き出し、それらを繋ぎ合わせて一つの文章に要約する、という非常に高度な作業を行っています。
しかし、この「繋ぎ合わせる」という作業が、AIにとっては至難の業。Aというサイトの「〇〇は有効です」という部分と、Bというサイトの「ただし、△△の場合は危険です」という部分を組み合わせる際、AIは文脈を無視して「〇〇は危険です」という、全く逆の意味の文章を作り出してしまうことがあります。これが、AI概要の信憑性を大きく損なう原因の一つとなっています。
その情報は大丈夫?AI概要の「信憑性」を瞬時に見抜く3つのチェックポイント
では、私たちは目の前に表示されたAI概要を、どう判断すればいいのでしょうか。危険な誤情報に騙されないための、簡単なチェックポイントを3つご紹介します。
チェックポイント1:「情報源」のリンクを確認しよう
AI概要の右上や下には、その情報を生成するために参考にされたWebサイトへのリンクが表示されています。まず、ここを確認する癖をつけましょう。
- 信頼できる情報源か?: リンク先は、官公庁や大学、報道機関、企業の公式サイトといった信頼できるドメインでしょうか?
- 怪しい情報源ではないか?: 匿名の個人ブログや、誰でも書き込める掲示板、内容の薄いまとめサイトなどが情報源になっていないでしょうか?
情報源を確認するだけで、その概要の信憑性はある程度推測できます。
チェックポイント2:「ありえない」組み合わせの文章に注意しよう
「ウサイン・ボルトは小学5年生より早いですか?」のような、常識的に考えてありえない、奇妙な問いや文章が概要に含まれている場合は、危険信号です。それは、AIが複数の文章の文脈を正しく理解できずに、機械的に繋ぎ合わせた結果である可能性が高いです。少しでも「ん?」と違和感を覚えたら、その情報の信頼性はゼロだと考えましょう。
チェックポイント3:数字や専門的な情報は「必ず裏取り」する癖をつけよう
AIは、特に数字や日付、法律、医療といった、正確性が厳密に求められる情報を間違えやすい傾向があります。
- 「〇〇の市場規模は△△億円」
- 「□□という病気の治療法は…」
- 「法律で定められた手続きは…」
このような情報がAI概要に表示されても、絶対に鵜呑みにしてはいけません。必ず情報源のリンク先記事を自分で読み、元の文脈で内容が正しいかを確認する「裏取り」を徹底しましょう。
「いらない」と切り捨てないで!Google検索のAI概要と賢く付き合うための3つのルール
「こんなに間違いが多いなら、AIによる概要なんていらない機能だ!」と感じるかもしれません。しかし、その弱点を理解した上で使えば、AI概要は私たちの情報収集を助けてくれる、非常に強力なツールにもなり得ます。AIに振り回されず、賢く付き合うための3つのルールを提案します。
ルール1:「知らないこと」をざっくり掴む「辞書」として使う
あなたが全く知らない新しい言葉や概念に出会った時、「〇〇って、そもそも何?」という最初のとっかかりを掴む上で、AI概要は非常に役立ちます。難しい専門書を読む前に、まずはAI概要で全体像をざっくりと把握する。そんな「最初の5分間」のための、便利な現代版の辞書として活用しましょう。ただし、その内容は「半分正解?」くらいに思っておくのが、精神衛生上も良い付き合い方です。
ルール2:「答え」ではなく「答えのヒント」を探す場所と心得る
AI概要は、あなたの思考を停止させるための「最終的な答え」ではありません。むしろ、そこからどの情報源を深く読むべきかを選ぶための「思考の出発点(ヒント)」と考えるべきです。
AI概要と、その下に並ぶ従来の情報源リンクを見比べて、「AIはこう要約しているけど、この記事にはもっと違うことが書いてありそうだぞ?」と、批判的な視点を持つことが重要です。AI概要は、あなたを賢くするための「目次」であり、思考をサボるためのものではないのです。
ルール3:絶対に「コピペ」しない。レポートや仕事で使うのは超危険!
これは絶対に守ってください。AI概要の文章を、そのまま学校のレポートや仕事の資料にコピー&ペーストするのは、非常に危険です。
理由は2つ。1つは、これまで述べてきたように、その情報が間違っている(誤情報)可能性があるから。そしてもう1つは、元の記事の文章をそのまま引用している場合、著作権侵害にあたる可能性があるからです。
AI概要は、あくまであなた自身が自分の言葉で文章を再構築するための、「下調べ」の材料と割り切りましょう。
【お悩み相談室】「AIによる概要」に関する”よくある質問”
Q1. AIによる概要は、オフにしたり、非表示にしたりできないの?
A1. 残念ながら、2025年現在、多くのユーザーにとって、この機能を完全にオフにする簡単な公式設定は提供されていません。 Googleは検索体験の核としてこの機能を推進しているため、一部の特殊なケースを除き、基本的には表示され続けると考えておくのが良いでしょう。「いらない」と感じるユーザーが多いのも事実ですが、現時点では上手な付き合い方を探るのが現実的な対策となります。
Q2. この機能は、いつから始まったの?
A2. 日本では、2024年8月頃から多くのユーザーの検索結果に「AIによる概要(AI Overview)」として本格的に表示され始めました。 それ以前からSGE(生成AIによる検索体験)という名称でテストが行われており、まさに今、世界中でこの新しい検索の形が浸透し始めている段階です。
Q3. 面白い間違いや、トンデモ回答が生まれるのはなぜ?
A3. AIがインターネット上の「冗談」と「事実」を区別できないからです。 「なんj」のような掲示板でのユニークな言い回しや、SNSでのネタ投稿も、AIは真面目に学習データとして取り込んでしまいます。その結果、人間が見れば笑ってしまうような、面白い間違いが生まれるのです。
Q4. なぜGoogleは、こんなに間違いの多い機能を公開したの?
A4. AI開発の競争が世界的に激化しており、「完璧なものができるまで待つ」のではなく、「まず公開して、ユーザーからのフィードバックを得ながら改善していく」というアプローチを取っているためです。 もちろん、誤情報が多いことへの批判は真摯に受け止め、日々システムの改善を行っています。私たちは、この巨大な社会実験の真っ只中にいる、と言えるのかもしれません。
まとめ
AIによる概要は、非常に便利で強力な可能性を秘めている一方で、多くの弱点と危険性を抱えた、まだ発展途上の技術です。
覚えておいてほしいのは、AI概要はあなたの思考を助けてくれる賢い「アシスタント」にはなりますが、全幅の信頼を置ける「先生」ではない、ということです。
最終的に、その情報が本当か嘘か、信じるに値するかどうかを判断するのは、他の誰でもない、私たち人間自身の「知性」です。AIに振り回されるのではなく、その特性を理解し、便利な道具として使いこなす。
この記事が、あなたがAIと賢く付き合っていくための、最初の一歩となれば幸いです。
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