AIイラストの服装を固定する3つの神技!Stable DiffusionからMidjourneyまで完全解説

ai 服装 固定 AI全般

「せっかく生み出した、お気に入りのAIキャラクター。完璧な表情、理想の髪型…よし、この子で物語を作ろう!」

そう意気込んで、新しいシーンを描かせるプロンプトを打ち込んだ次の瞬間、彼女(彼)は全く違う服を着て、まるで別人のように現れる…。
「君、誰!?」と、PCの前で思わず叫んでしまった経験、ありませんか?

その悩み、AIイラストを本気で楽しむすべてのクリエイターが、一度は必ず通る道です。

この記事は、そんなAIの気まぐれに悩むあなたを、AIを自在に操る「キャラクターデザイナー」へと変えるための、少し特別な技術マニュアルです。初心者向けの簡単なプロンプト術から、上級者向けのAI調教術まで、あなたのスキルレベルに合わせた「服装固定」の神技を、余すところなく伝授します。

なぜAIは服装を覚えてくれないのか?AIの「記憶」の仕組み

対策を学ぶ前に、まず「なぜAIはキャラクターの服装を覚えてくれないのか?」という根本的な理由を知っておきましょう。

結論から言うと、AIには人間のような「記憶」という概念がありません。 あなたがお気に入りのキャラクターを生成したとしても、AIはそのキャラクターを「覚えている」わけではないのです。

AIにとって、すべての画像生成は、その場限りの一期一会。あなたが入力した「プロンプト(呪文)」と、生成の初期値となる「Seed値(シード値)」という、その瞬間の指示に基づいて、膨大な学習データの中から「最も確率の高い、それらしい画像」を組み立てているに過ぎません。

服装が毎回変わってしまうのは、あなたが同じような指示を出しても、AIが「このキャラクターには、こういう服装も似合うかもしれない」と、確率に基づいて毎回、親切心(あるいはお節介)で違う服を選び直してしまっているからなのです。

つまり、AIに服装を「記憶」させることはできません。私たちがすべきなのは、AIが他の服を選べなくなるように、より厳密に「指示」し、「制御」する技術を身につけることなのです。

【初心者編】呪文(プロンプト)を極める!服装固定の基本テクニック

まずは、特別なツールを使わずに、プロンプトの工夫だけで服装の固定に挑戦してみましょう。これだけでも、一貫性はかなり向上します。

テクニック1:服装を“超”具体的に描写する

AIが他の服を想像する余地をなくすため、服装の情報を、これでもかというほど具体的に書き込みましょう。

  • NG例: a girl in a dress(ドレスを着た少女)
    • これでは、AIは無数のドレスの中からランダムに一つを選んでしまいます。
  • OK例: a girl in a red plaid long-sleeve dress, white collar, black ribbon tie(赤いチェック柄の長袖ワンピース、白い襟、黒いリボンのネクタイを着た少女)
    • 色、柄、形状、素材、装飾など、細部を描写すればするほど、AIの選択肢は狭まり、服装は固定されやすくなります。

テクニック2:「一貫したキャラクターシート」を作る

毎回、服装の長いプロンプトを手打ちするのは大変です。メモ帳アプリなどに、あなたが生み出したキャラクターの「設定資料(キャラクターシート)」を作っておきましょう。

// キャラクターシート:リナ
Lina, a girl with long silver hair and blue eyes,
wearing a red plaid long-sleeve dress, white collar, black ribbon tie,
black stockings, and brown leather boots.

新しいイラストを生成する際は、このキャラクターシートをプロンプトの冒頭にコピー&ペーストし、その後に「standing in a library」(図書館に立っている)といった、状況説明のプロンプトを付け加えるだけです。

テクニック3:同じ「Seed値」を使う

Seed値は、画像の初期ノイズを決定する数値です。この値を固定すると、生成される画像の構図やキャラクターの雰囲気が非常に似やすくなります。服装も固定されやすくなりますが、ポーズまで似てしまうため、多様なシーンを描くのには限界があります。他のテクニックと組み合わせて使うのがおすすめです。

【中級者編】部分修正の神髄!「Inpaint」で服装を固定・変更する

ここからは、主にStable Diffusionユーザー向けの、より高度なテクニックです。「Inpaint(インペイント)」は、画像の一部だけを修正・再生成する強力な機能です。

Inpaintの基本:服装「以外」を再生成する

キャラクターの服装はそのままに、背景だけを変えたい、という場合に非常に有効です。

  1. 基準となるキャラクター画像を「img2img」の「Inpaint」タブに読み込みます。
  2. 修正したくない「服装」と「キャラクター」の部分を、丁寧にマスク(塗りつぶし)します。
  3. プロンプトには、キャラクターの情報は含めず、「in a library」(図書館の中)といった、新しい背景の情報だけを入力します。
  4. 「マスクした領域のみ」を再生成するように設定し、画像を生成します。

こうすることで、AIはマスクされていない背景部分だけを、新しいプロンプトに従って描き直してくれます。

応用編:服装「だけ」を変更する

逆に、キャラクターの顔やポーズ、背景はそのままに、服装「だけ」を着せ替えたい場合は、マスクする範囲を逆にします。

  1. 基準となる画像をInpaintに読み込みます。
  2. 今度は、変更したい「服装」の部分だけをマスクします。
  3. プロンプトには、キャラクターの情報と、新しく着せたい服装の情報(例:「a girl in a blue sailor uniform」)を入力します。
  4. 「マスクした領域のみ」を再生成すれば、キャラクターが新しい服に「着替え」てくれます。

【上級者編】AIを“調教”する!「LoRA」で完全な一貫性を目指す

プロンプトやInpaintでも満足できない、完璧な一貫性を求めるあなたへ。究極のテクニックが「LoRA(ローラ)」です。

LoRAとは?:あなただけの「専用追加学習モデル」

LoRAとは、一言でいうと、特定のキャラクターや服装、画風などをAIに追加で学習させる、あなた専用の「教科書」のようなものです。

同じ服装を着たキャラクターの画像を何枚も用意し、それを使ってLoRAファイルを作成します。一度この「教科書」を作ってしまえば、あとはプロンプトで簡単な呪文(LoRAを呼び出すコマンド)を唱えるだけで、AIはいつでも、その学習させた通りの服装を、完璧に再現してくれるようになります。

  • LoRAのメリット: 圧倒的な一貫性。一度作れば、プロンプトが非常にシンプルになります。
  • LoRAのデメリット: 作成に数十枚の学習画像が必要で、専門的な知識とPCのスペックが要求されます。

LoRAの作成は上級者向けですが、その効果は絶大です。本気でAIイラストに取り組むなら、挑戦してみる価値は十分にあります。

【Midjourneyユーザー向け】最新機能「Character Reference (cref)」の使い方

「Stable Diffusionは難しくて…」というMidjourneyユーザーの皆さん、お待たせしました。Midjourneyにも、キャラクターの一貫性を保つための画期的な新機能が搭載されています。それが「Character Reference(キャラクター参照)」、通称crefです。

使い方は驚くほど簡単。

  1. まず、基準にしたいキャラクターの画像を、Discordにアップロードするか、既存の画像のURLを取得します。
  2. プロンプトの最後に、以下のパラメータを追加するだけです。

--cref [画像のURL]

これだけで、Midjourneyは参照した画像のキャラクターの特徴(顔、髪型、そして服装)を強く引き継いだ、新しい画像を生成してくれます。複数の画像を参照させたり、--cwというパラメータで特徴を引き継ぐ強さを調整したりすることも可能です。LoRAほど完璧ではありませんが、手軽さと精度のバランスが非常に優れた、素晴らしい機能です。

【お悩み相談室】キャラクターの一貫性に関する”よくある質問”

Q1. Stable Diffusionで、服装「だけ」を簡単に変える方法は?

A1. 本文でも解説した通り、「Inpaint」機能を使うのが最も簡単で確実です。変更したい服装の部分だけをマスクし、新しい服装のプロンプトを入力して再生成してみてください。

Q2. 服装だけでなく、「顔」を固定するにはどうすればいい?

A2. 顔の固定も、基本的な考え方は服装と同じです。プロンプトで顔の特徴(髪の色、目の色、髪型、表情など)を非常に細かく指定するのが基本です。Stable Diffusionであれば、顔専用の「LoRA」を作成したり、「ControlNet」のReference-OnlyFaceIDといった機能を使ったりすることで、より高い精度で顔を固定できます。

Q3. AIイラストの利用には、著作権など法的な問題はありますか?

A3. 非常に重要な質問です。2025年現在、AI生成物の著作権に関する法整備はまだ過渡期にあります。基本的には、特定の著作物(既存の漫画やアニメのキャラクターなど)を無断で学習させたモデルを使ったり、生成した画像が既存の作品と酷似していたりすると、著作権侵害と見なされる可能性があります。個人で楽しむ範囲でも、公開する際には細心の注意が必要です。

Q4. もっと簡単に、スマホアプリで服装を固定できるものはありますか?

A4. 「SeaArt AI」などの一部のスマホアプリには、LoRAと同様の追加学習機能や、キャラクターの一貫性を保つための機能が搭載され始めています。PCほどの自由度はありませんが、手軽に試してみたい方には良い選択肢です。

まとめ

AIイラストの服装固定は、AIに「記憶」させるのではなく、私たち人間が「指示」し、「制御」する技術です。

それは、AIの気まぐれと戦うことではありません。プロンプトの言葉を紡ぎ、Inpaintで筆を入れ、LoRAで魂を吹き込む。そのプロセスは、AIという新しい画材の特性を理解し、最高の作品を生み出すための、クリエイターとしての対話そのものです。

この記事で紹介したテクニックを使いこなし、AIをあなただけの最高の創作パートナーにしてください。
そして、あなたが生み出した唯一無二のキャラクターで、あなただけの物語を、無限に紡ぎ出していきましょう。

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