「この会話、もしかして誰かに見られてる…?」
「さっき入力した自分の名前、AIにずっと記憶されちゃうのかな?」
ChatGPTとの便利で楽しい会話の裏側で、ふと、そんなセキュリティに関する不安がよぎったことはありませんか。その感覚、AIと賢く付き合っていく上で、実は非常に大切です。
結論からお伝えします。はい、何も対策をしなければ、ChatGPTに入力した情報が漏洩するリスクは存在します。しかし、過度に怖がる必要はありません。たった一つの、そして非常に簡単な「設定」をするだけで、あなたのプライバシーは格段に安全になります。
この記事は、そんなあなたのプライバシーに関する不安を、確かな「安心」に変えるための、日本一分かりやすい「安全マニュアル」です。これから安全に使いたい方も、すでに入力してしまって青ざめている方も、この記事を読めば、今日から安心してChatGPTを使いこなせるようになりますよ。
まず知っておこう:ChatGPTはなぜあなたの会話を「記憶」するのか?
対策を学ぶ前に、まず「なぜリスクがあるのか」を理解しておくことが重要です。ChatGPTがあなたの会話を記憶するのには、ちゃんとした理由があります。
AIの教科書になる:あなたの会話が、AIを育てる
ChatGPTは、より賢く、より自然な会話ができるようになるために、世界中のユーザーとの膨大な会話を「教科書(学習データ)」として学んでいます。あなたが入力した質問や情報は、デフォルト設定のままでは、このAIの教科書の一部として利用される可能性があるのです。
「公共の掲示板」と同じ、という意識が最も安全
少し極端な例えかもしれませんが、ChatGPTとの会話は「インターネット上の、誰でも見られる可能性のある公共の掲示板に書き込んでいる」くらいの意識を持つのが、最も安全な心構えです。もちろん、あなたの会話がそのまま他のユーザーに表示されるわけではありません。しかし、「一度インターネットにアップロードした情報は、完全にコントロールすることはできない」という基本原則は、ChatGPTにも当てはまります。
OpenAIの社員は見ている?
はい、見ています。ChatGPTを開発するOpenAIは、そのプライバシーポリシーの中で、AIの性能改善や安全性の確保のために、権限を与えられた従業員がユーザーの会話履歴を確認することがある、と公式に明言しています。秘密の日記帳ではなく、品質改善のための公開アンケートのようなものだと考えておきましょう。
【最重要】あなたの情報を守る、たった一つの「黄金ルール」と安全設定
では、どうすればこのリスクから自分の情報を守れるのでしょうか。難しいことはありません。たった一つのルールと、一つの設定を覚えるだけです。
黄金ルール:「匿名化」を徹底する
まず、普段から身につけておくべき最も重要な習慣が「匿名化」です。ChatGPTに何かを相談したり、文章の添削を依頼したりする際は、具体的な固有名詞をすべて仮名に置き換える癖をつけましょう。
- 自分の名前 → 「私」「Aさん」
- 会社名 → 「X社」「IT系の企業」
- 商品名 → 「新商品の〇〇」
- 住所 → 「都内」「〇〇駅の近く」
このように、個人や組織が特定できる情報を最初から入力しないことが、最強の防御策です。
「学習させない」ための神設定:チャット履歴とトレーニングをオフにする方法
そして、これが最も強力な技術的対策です。この設定をオンにすると、あなたの会話はAIの学習データとして一切使われなくなり、30日後にシステムから完全に削除されるようになります。
【PC(ブラウザ版)での設定手順】
- ChatGPTの画面左下にある、あなたの名前をクリックします。
- メニューから「設定(Settings)」を選択します。
- 「データコントロール(Data controls)」という項目をクリックします。
- 「チャット履歴とトレーニング(Chat history & training)」という項目のスイッチをオフ(緑色から灰色へ)にします。
【スマホアプリ版での設定手順】
- アプリ画面左上のメニューボタン(横二本線)をタップします。
- 画面左下にある、あなたの名前をタップします。
- メニューから「設定(Settings)」を選択します。
- 「データコントロール(Data controls)」という項目をタップします。
- 「チャット履歴とトレーニング(Chat history & training)」のスイッチをオフにします。
この設定には、プライバシーが保護されるという絶大なメリットがある一方で、過去の会話履歴が見られなくなるというデメリットもあります。履歴機能を活用したい方は、会話ごとに「匿名化」を徹底する黄金ルールを守り、機密情報を扱う時だけこの設定をオンにする、といった使い分けも有効です。
具体的にどこまでがNG?入力してはいけない個人情報リスト
「匿名化」と言われても、具体的にどこまで気を付ければいいのか、判断に迷いますよね。以下に、絶対に入力してはいけない情報の具体例をリストアップしました。
- 個人を特定できる情報: 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、マイナンバー、運転免許証番号、顔写真など
- セキュリティ情報: あらゆるサービスのパスワード、クレジットカード番号、銀行の口座情報、秘密の質問の答えなど
- 所属組織の機密情報: 会社の内部資料、未公開のプロジェクト情報、顧客データ、営業秘密など
- 他人のプライバシーに関わる情報: 友人や家族の個人情報、許可なく撮影した他人の写真や情報など
基本的には、「もしこの情報がインターネットに公開されたら、自分や誰かが困るもの」は、一切入力しない、と覚えておきましょう。
「もう入力してしまった…」と青ざめているあなたへ:履歴の削除方法
もし、この記事を読む前にうっかり個人情報を入力してしまったとしても、まだ慌てる必要はありません。落ち着いて、以下の手順で対処しましょう。
ステップ1:個別のチャット履歴を削除する
まずは、問題の会話をあなたのチャット履歴から削除しましょう。これにより、少なくともあなたのChatGPTの画面からは、その会話は表示されなくなります。
- ChatGPTの画面左側にあるチャット履歴の一覧から、該当の会話にカーソルを合わせます。
- 表示される「…」アイコンをクリックし、「チャットを削除(Delete chat)」を選択します。
- 確認画面が表示されるので、再度「削除(Delete)」をクリックします。
ステップ2:OpenAIに「データ削除リクエスト」を送信する
より根本的に、AIの学習データから自分の情報を削除してほしい場合は、OpenAIに直接「データ削除リクエスト」を送るという、公式な手段があります。少し手間はかかりますが、最も確実な方法です。
- ChatGPTのヘルプセンターにアクセスします。
- データ削除に関するフォーム(Data Deletion Request Form)を探し、必要事項を記入して送信します。
この手続きは、あなたのプライバシーを守るための正当な権利です。入力してしまった情報が非常に重要なものである場合は、この方法を検討してください。
【お悩み相談室】ChatGPTの個人情報“よくある質問”
Q1. 個人情報を入力したら、他のユーザーにバレる?
A1. いいえ、あなたの会話が、他のChatGPTユーザーの画面にそのまま表示される、ということはありません。 しかし、AIがあなたの入力した情報を学習し、他のユーザーへの回答を生成する際に、その知識を間接的に利用してしまう可能性はゼロではありません。だからこそ、「学習させない」設定が重要なのです。
Q2. 過去にどんな情報漏洩の「事例」があったの?
A2. 2023年3月に、技術的な不具合により、一部のユーザーのチャット履歴の「タイトル」が、他のユーザーにも見えてしまうという事件がありました。 会話の中身自体が漏洩したわけではありませんが、タイトルに個人情報を含めていた場合、それが他人に知られてしまう可能性があったのです。この事例からも、機密情報を扱うことの危険性が分かります。
Q3. ChatGPTで「聞いてはいけないこと」って、個人情報以外にもある?
A3. はい、あります。 OpenAIの利用規約では、以下のような内容の質問や指示は明確に禁止されています。
- 違法行為(ハッキング、薬物製造など)を助長する内容
- 差別的、暴力的なヘイトスピーチ
- 自傷行為を推奨するような内容
これらは、あなたのプライバシーだけでなく、社会全体の安全を守るためのルールです。
Q4. 会社のPCでChatGPTを使っても大丈夫?情報漏洩のリスクは?
A4. まずは、あなたの会社の情報セキュリティに関するルールを必ず確認してください。 多くの企業では、ChatGPTのような外部AIサービスの利用に、厳しいガイドラインを設けています。許可なく会社の機密情報を入力することは、情報漏洩事故に繋がりかねない、非常に危険な行為です。絶対にやめましょう。
まとめ
ChatGPTは、私たちの創造性や生産性を飛躍的に高めてくれる、魔法のようなツールです。しかし、その魔法を安全に楽しむためには、一つの大切な心構えが必要です。
それは、ChatGPTを「公共の場」だと認識すること。
公共の場で話せないようなプライベートな内容や機密情報は、ChatGPTにも入力しない。そして、この記事で紹介した「チャット履歴とトレーニングをオフにする」という設定は、あなたのプライバシーを守るための、最強の「盾」になります。
正しい知識と設定でリスクをしっかりと管理し、ChatGPTがもたらしてくれる便利な恩恵を、最大限に享受していきましょう。
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